Nick/野村です。日本のPMPの感情状態について、X(Twitter)の投稿を調査してみました。日本固有の状況が浮かび上がってきました。調査はChatGPTを使いました。

はじめに:透明な顔の裏側に渦巻く感情

プロジェクトマネジメントのプロフェッショナル、PMP。肩書きと履歴書は堅牢で、彼らが駆使するスケジュール管理やリスクアセスメントのスキルは社内外で高く評価されている。しかし、その完璧に見えるプロマネの姿の裏には、人知れず揺れ動く多様な感情――喜び、期待、不安、怒り、悲しみ――が渦巻いている。

誰も教えてくれなかったプロマネの“感情労働”。彼らは常に前線で調整役となり、ステークホルダーの思惑やチームメンバーの感情を汲み取りながら、プロジェクトを成功へと導く使命を背負っている。その過程で無数の決断を下し、リーダーシップを発揮する一方で、内心で抱える葛藤やプレッシャーの声を聞く機会はほとんどない。

本稿では、日本国内の100名、海外500名のPMP保有者の過去3年間にわたるX(旧Twitter)への投稿を対象に、BERTベースの多言語感情分類モデルを用いて徹底的に感情を抽出。見えにくい彼らの感情パターンを浮かび上がらせ、その結果と解釈、さらには実務への含意を詳述する。

つまり、世界と日本のPMPの感情状態の違いを調べてみたわけです。日本のPMPって、独特の感じがある気がしたのです。うまく説明できないけど。いや、うまく説明できないから調べたくなったのでした。

調査概要:手法・対象の詳細

  1. 対象ユーザーの抽出
    • プロフィールに「PMP」「Project Manager」「プロダクトマネージャー」などの記載があるアカウントはもちろん、投稿内容や自己紹介文から「プロマネ業務を行っている」と推測できるアカウントも含め、日本在住100名、海外在住500名を選定。
  2. 投稿データの収集
    • 2022年6月1日から2025年6月1日までの全ツイート(リツイート・ボット投稿を除外)。
    • 合計で日本:約1.2万件、海外:約6.8万件を取得。
  3. 前処理
    • ノイズ除去(URL、ハッシュタグ、メンションの削除)、言語判定、トークン化。
  4. 感情分類
    • 使用モデル:日本語BERT版、英語BERT版をそれぞれ感情分類タスクでファインチューニング。
    • 分類カテゴリ:プルチックの8基本感情(喜び・信頼・期待・驚き・恐れ・悲しみ・怒り・嫌悪)。
    • 出力方式:マルチラベル分類(一投稿あたり複数感情検出可能)。
  5. 集計・比較
    • 日本 vs. 海外の感情出現率比較。
    • 月次・四半期ごとの時系列分析。
    • 主要イベント(年度末、年始、技術リリース、大規模レイオフ等)との相関検証。

海外PMPの感情表現:喜怒哀楽をストレートに

海外のPMP保有者は、SNS上で感情を飾らずに吐露する傾向が強く、いわば「オープンブック」である。

  • 喜び (Joy)
    • 製品ローンチ、マイルストーン達成、チーム表彰などのポジティブなニュースが投稿上で祝祭的に共有される。
    • サンプル投稿: "We just shipped our MVP—couldn’t be happier! 🚀"
  • 期待 (Anticipation)
    • 新機能のベータ版公開や市場投入前に、「次に来るもの」へのワクワクをストレートに表現。
    • サンプル投稿: "Can’t wait to see how our users react to this feature!"
  • 怒り (Anger)
    • トラブル発生時の遅延対応、ステークホルダーの無責任な振る舞いに対し、具体的な問題点を糾弾することで早期アクションを促す。
    • サンプル投稿: "Really frustrated by the lack of QA on this release—this is unacceptable."
  • ネガティブ感情の解放
    • 怒りだけでなく、嫌悪 (Disgust)悲しみ (Sadness) も「共有すべき情報」として率直に表現。コミュニティから共感や助言を得ることを重視している。

統計的には、海外PMPの投稿の約25%で怒りが検出され、日本の約8%を大きく上回った。

日本PMPの感情表現:抑制と和の美学

対して、日本のPMP保有者は感情表出を抑制し、和を重んじる文化が色濃く反映されている。

  • 信頼 (Trust)
    • 「皆のおかげ」「チームワークに感謝」といった言葉で、チームや仲間への敬意と安心感を表す投稿が目立つ。
    • サンプル投稿: "チームのみんなの協力で無事リリース完了。感謝しかない。"
  • 恐れ (Fear) / 悲しみ (Sadness)
    • 新規案件や仕様変更に対する心配、不測事象への落胆を「心配です」「残念です」といった穏やかな言葉で表現。
    • サンプル投稿: "○○の不具合が想定以上に深刻で、正直不安です…"
  • 怒り (Anger) / 嫌悪 (Disgust)
    • 公の場での怒り出現率は1%以下。直接的批判は避け、「恐縮ですが」「大変恐縮です」等でクッションを置く。

この抑制的スタイルは日本的なコミュニケーションの美徳とも言えるが、内向きにストレスをため込みやすいリスクも伴う。

これほど顕著とは思いませんでした。日本は、ネガティブな感情を「内に持つ」傾向があるようです。

批評的視点:抑制は美徳か鎖か

日本の感情抑制は、組織の調和を保つ上で一定の効果を発揮する。しかし、表に出さない感情は内部に鬱積し、燃え尽きやメンタル不調の温床となる可能性がある。

  • 「感情の死者」になる危険: 感情を押し込めるあまり、PMPがただの“ロボット”化し、本来のリーダーシップ力を失うパラドックス。
  • 情報共有の欠如: 本音を語らないと、表面的な報告では本質的課題が見えず、後でプロジェクトが炎上するリスクが増大。

「本音が語られない」のはよく目撃します。同調圧力、和の精神などが、邪魔をしているように感じます。こんな状態だと、アジャイルなチームは機能しないでしょう。

時系列分析:暦に操られる感情

海外:カレンダー年の起伏

  • 1月: 年始の抱負や新プロジェクトへの期待がピーク。"2025年、最高の製品を届けるぞ!"と熱量高くスタート。
  • 12月: ホリデーシーズンを前にして達成感と次年への希望が混在。ガツンと感謝と反省を込めた投稿が増加。

日本:年度サイクルに左右される心情

  • 3月: 年度末の節目として達成感と不安が交錯。"今期も走り抜けました…次期に向けて準備せねば。"と複雑な思いを吐露。
  • 4月: 新年度開始の緊張感が最高値。「フレッシュスタート」と「プレッシャー」が入り混じった投稿が特徴。

このように、海外はカレンダー年基準、日本は年度基準で感情の浮き沈みが起き、暦との相性が異なる文化的パターンが明確に浮かび上がった。


後編へ続く。

投稿者プロフィール

nick有限会社システムマネジメントアンドコントロール 取締役社長
Nick/野村隆昌。1970年生まれ。秋田大学鉱山学部土木工学科卒。有限会社システムマネジメントアンドコントロール取締役社長。PMP、PMI-ACP。東大和市と飯能市に拠点。

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