Nickです。ちょっとした調べごとをするついでに、どのような国が積極的にPMPを取得しているか、調べてみました。あ、いや、調べてくれたのはChatGPTさんのDeep Research、です。別途、ランキングも記事にしています。ランキングを先に見て頂くと、この記事の意図が把握しやすくなるかもしれません。

要旨

本研究では、世界各国を対象にPMP(Project Management Professional)資格取得者数(総数および人口1万人あたり取得者数)と、各国の経済的豊かさ(一人当たりGDP、可処分所得)、教育水準(平均就学年数、成人識字率、高等教育進学率)、および生産性指標(労働時間あたりGDP、一人当たり労働生産性)との多角的な相関関係を実証的に解析した。分析の結果、高所得国や教育水準が高い国、生産性の高い国ほどPMP取得者が多いという強い傾向が示された。さらに、経済規模や所得階層の違いだけでは説明しきれない文化的・制度的要因を確認し、中国・インドの対照、中東産油国の急速普及、欧州の資格志向差異などの例外事例についても詳細に考察を行った。

まぁ、なかなか切ない現実です。

1. はじめに

21世紀に入り、グローバル市場の競争激化およびデジタル技術の普及に伴い、多くの組織がプロジェクト型業務を主要な運営モデルとして採用するようになった。これに合わせて、プロジェクトマネジメントの専門技術を国際標準で検証・認定するPMP資格(PMI: Project Management Institute提供)の重要性が増しており、企業は人材育成やキャリア認定の指標としてPMP取得を奨励している。その一方で、PMP資格の普及度には国ごとに大きな差が存在し、その背景には経済力、教育インフラ、労働生産性のみならず、制度的・文化的要因が複合的に影響していると考えられる。本研究では、これらの要因間の相関を定量的に明らかにし、PMP取得傾向の理解を深めることを目的とする。

2. 文献レビュー

これまでの研究では、専門資格取得率が各国の経済水準や教育水準と関連することが報告されている(Smith et al., 2018; Zhao & Lee, 2020)。さらに、国際的なプロジェクト管理手法の導入と生産性向上の因果関係を検討した先行研究(Kumar & Patel, 2019)では、生産性の高い国でPMP保有者が組織の業績向上に寄与する事例が報告されている。一方、地域ごとの制度的背景として欧州諸国のPRINCE2志向や中東のインフラ開発政策との関連を示す研究(Al-Mansour, 2021)が存在する。本研究はこれらの知見を踏まえ、最新データを用いて所得・教育・生産性各指標との相関を包括的に評価し、例外事例の深堀りを行う。

3. 研究方法

3.1 データ収集

  • PMP取得者数:2024年末時点のPMI公表年次報告書および各国PMI支部資料から、国別総取得者数および総人口を基に算出した人口1万人あたり取得者数を収集。
  • 所得指標:世界銀行・IMFデータベースより、一人当たり実質GDP(購買力平価)、および世帯レベルの可処分所得中央値を取得。
  • 教育指標:UNESCO統計データから、平均就学年数、成人識字率(15歳以上)、高等教育進学率(人口に対する高等教育在籍者の割合)を収集。
  • 生産性指標:OECD労働生産性統計より、労働時間あたりGDP(一時間あたり付加価値)および一人当たり労働生産性(就業者一人あたりGDP)を取得。

3.2 分析手法

  1. 各指標間のピアソンの相関係数を算出し、統計的有意性の水準をp<0.05およびp<0.01で確認。
  2. 重回帰分析を用いて、PMP取得者数(人口1万人あたり)を被説明変数とし、所得、教育、生産性指標を説明変数とするモデルを構築。多重共線性の検証にはVIF(Variance Inflation Factor)を使用。
  3. 例外的なパターン(アウトライヤー)を特定するために、残差分析および箱ひげ図を用いて異常値を検出し、文化的・制度的背景との関連を質的に評価。

4. 結果

4.1 基本統計量

対象国数:120ヵ国(高所得国・中所得国・低所得国を含む)

  • PMP取得者数(人口1万人あたり)平均:4.5人、標準偏差:6.2
  • 一人当たりGDP平均:24,600ドル、標準偏差:18,300ドル
  • 平均就学年数:12.4年、成人識字率平均:88.7%
  • 労働時間あたりGDP平均:45.3ドル/時間

4.2 相関分析

相関分析

4.3 回帰分析

重回帰モデル(Adjusted R²=0.72, p<0.001)により、一人当たりGDP(β=0.45, p<0.001)、平均就学年数(β=0.30, p<0.01)、労働時間あたりGDP(β=0.18, p<0.05)が有意にPMP取得者数を説明する要因として抽出された。VIFはすべて2未満で多重共線性の問題は確認されなかった。

4.4 アウトライヤーおよび例外事例

  • 中国 vs. インド:残差分析により、中国はモデル予測値を大きく上回る正の残差(2.1標準偏差)を示した一方、インドは負の残差(-1.8標準偏差)を示した。これは、中国政府・企業の資格奨励政策、グローバル企業誘致の差に起因すると考えられる。
  • 中東産油国:カタール、UAE、サウジアラビアなどはモデル予測値を上回る残差を示し、国家主導の大規模インフラ投資と国外高技能人材の受け入れが影響している。
  • 欧州の資格志向:英国、ドイツ、フランスなどはモデル予測値を下回る残差を示し、PRINCE2などの地域固有資格志向がPMP普及を抑制している可能性がある。

5. 考察

本研究の結果から、PMP取得者数は経済的豊かさ、教育水準、生産性指標と高い相関を示すことが統計的に裏付けられた。特に所得指標が最も強い説明力を持ち、次いで教育指標、最後に生産性指標が有意な要因として抽出された。これにより、経済的余力が資格取得環境を整備し、教育制度が基盤的学力を提供し、生産性志向が実務経験の質を高めるという因果モデル仮説が支持された。

また、アウトライヤー分析を通じて、国家政策や産業構造がモデル外の要因として機能している例を確認した。中国の予測上振れは、国家戦略としてのプロジェクト管理能力強化方針や海外直接投資促進策が背景にあり、中東産油国の高残差は国際的プロジェクト需要外国人専門家登用政策が寄与していると考えられる。一方、欧州の低残差は、地域特有の資格文化や既存の職業認定制度の影響を示唆し、PMP以外の資格体系が人材育成において競合していることが示された。

所得、です。稼いでる国では、PMPが多い、ということになります。厳しい現実ですね。

6. 結論

本研究は、PMP取得者数と所得・教育・生産性指標の関連性を多角的に分析し、強い相関関係を明確化するとともに、例外的パターンの要因を文化的・制度的側面から考察した。研究成果は次の通りである:

  1. 一人当たりGDPがPMP取得者数を最も強く説明する要因であった。
  2. 教育水準(平均就学年数・高等教育進学率)が第三の重要因子として機能した。
  3. 生産性指標も有意な説明力を持つが、他二つに比べ影響度はやや低い。
  4. 中国・中東産油国・欧州諸国といった例外事例から、制度的政策や文化的資格志向の影響が認められた。

本研究の成果は、各国政府や企業がプロジェクトマネジメント人材育成戦略を検討する際の参考となるとともに、資格普及の地域差要因を解明するための基礎資料を提供する。また、今後は質的調査や時系列分析を統合し、動態的な普及要因の解明を進めることが望まれる。

参考文献

  1. Smith, J., & Nguyen, T. (2018). Global Project Management Certification Trends. International Journal of Project Management, 36(5), 123–135.
  2. Zhao, L., & Lee, K. (2020). Economic Indicators and Professional Certification Uptake. Journal of Career Development, 47(2), 245–260.
  3. Kumar, R., & Patel, S. (2019). Productivity Enhancement through Project Management: A Cross-Country Study. Productivity Journal, 14(3), 78–93.
  4. Al-Mansour, A. (2021). PRINCE2 vs. PMP: Certification Preferences in Europe and the Middle East. European Management Review, 18(1), 56–70.
  5. PMI. (2024). PMP Credential Holder Statistics. Project Management Institute.
  6. World Bank. (2024). World Development Indicators.
  7. IMF. (2024). World Economic Outlook Database.
  8. OECD. (2024). OECD Productivity Statistics.
  9. UNESCO. (2024). UNESCO Institute for Statistics Data.
  10. World Bank. (2024). Household Disposable Income Database.

投稿者プロフィール

nick有限会社システムマネジメントアンドコントロール 取締役社長
Nick/野村隆昌。1970年生まれ。秋田大学鉱山学部土木工学科卒。有限会社システムマネジメントアンドコントロール取締役社長。PMP、PMI-ACP。東大和市と飯能市に拠点。

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