
Nick/野村です。今日はPMPについて、いろいろ書いておこうと思います。記事に合ったイラストを生成させようとして全然ダメだったので、遊びで作ったイラストをアイキャチにしておきます。
PMPとは何か?──プロジェクトマネジメントの本質に触れる資格
プロジェクトマネジメントという領域は、もはや一部の専門職に限られた知識体系ではありません。製品開発、業務改善、組織変革、あるいは個人の目標達成まで――私たちは日々「プロジェクト」に取り組んでいます。そして、そのプロジェクトを“どのように導くか”という判断力こそが、今あらためて問われているのです。
PMPは「判断力」を認定する資格である
PMP(Project Management Professional)は、米国PMI(Project Management Institute)が認定する、世界的に最も認知されたプロジェクトマネジメントの資格のひとつです。
この資格の本質は、単なる知識の有無を問うものではありません。むしろ、「プロジェクトマネジャーとして、状況に応じて適切な判断ができるか」を評価する構造になっています。実際、現在のPMP試験では、PMBOK®ガイド(第6版・第7版)を基盤としながらも、現実のプロジェクト現場に近いシナリオベースの出題が中心です。判断・意思決定・関係構築・適応――そういった要素が、問いとして現れます。
PMI自身もこう述べています:
“PMP認定者は、予測型・アジャイル型・ハイブリッド型のプロジェクト環境において、高い専門性と実践力を持ち、チームを導く力があることが証明されています。”
つまり、PMPはプロジェクトを「管理する」ための資格ではなく、「導く」ための資格なのです。
CAPMとPMP、そしてPMI-ACPの位置づけ
PMIは他にもさまざまな認定資格を提供していますが、中でも比較されやすいのが以下の2つです。
CAPM(Certified Associate in Project Management)
CAPMは、PMPの前段階に位置づけられる入門的な資格です。プロジェクトマネジメントの知識体系(PMBOK®ガイド)を体系的に理解していることを示すものであり、プロジェクトマネジメント経験がまだ少ない、あるいは無い人でも取得が可能です。判断力よりも知識の定着が評価されます。
PMI-ACP(Agile Certified Practitioner)
一方でPMI-ACPは、アジャイル型またはハイブリッド型のプロジェクト環境で求められる思考と行動にフォーカスした資格です。スクラム、カンバンといったアジャイル手法を実務で活用してきた経験者向けに設計されており、プロジェクトの中心的役割に加え、「参加者」や「チームメンバー」の視点も含まれるのが特徴です。
ただし、PMI-ACPを目指す上でも、まずはPMPを取得して「判断する構造」を体得しておくと、理解と実践の幅が格段に広がります。PMPは“静的な知識”を超えた“動的な選択”を問う設計になっているからです。
PMP資格は実務にどういかせるか
実務で能力を発揮するためには、様々なレベルの能力が必要となります。そのレイヤーについて考え、PMP資格の生かし方を考えてみましょう。
第一階層 肉体
第一階層は、身体性を持っています。骨格と筋肉などから成り立ちます。また、臓器としての脳を持っています。いわゆる五感(VAKOG)+意識、という入力があり、身体的筋肉動作(運動)、発話、意識、という出力があります。
第二階層 感情などの精神活動
第二階層は、感情や思考、こころ、といった、精神活動のレイヤーです。特にここは、無意識に作動しているレイヤーです。身体からの情報や刺激から、様々な感情が生じる機能です。意識の側から、このレイヤーをきちんと把握することは困難かもしれません。
第三階層 意識・思考・自己認識・メタ認知
第三階層は、「私」と思っているレイヤーです。人によっては、第二階層と分けることが困難なこともあります。たとえば、イライラしている、と、私はイライラしていると感じている、は、別のことなのです。後者はメタ認知が始まっています。また、私が私自身に関心のある程度によっては、自己認識が不得手なこともあるでしょう。自己認識の頻度、深さは、人によってかなり違いがあります。
さて、この第三階層は、さらに細かく分けると、様々な機能を持っています。たとえば記憶。記憶すること、記憶を思い出すこと、それぞれが機能です。思考することも、様々な機能から成り立っていると思います。
この層には、プロフェッショナルとしての素養も含まれると考えられます。たとえば、自己認識、弁証法的思考、認識論、メタ認知、一般教養などです。
いずれにせよ、ここはひたすら幅が広く、しかも、自分一人では十分な評価ができません。そのため、次のレイヤーも必要になります。
第四階層 関係
第四階層は、関係のレイヤーです。ここでは、ダイアローグにより、関係を作り、関係から社会を構築していきます。単にコミュニケーションを行う、ではなく、ダイアローグを連続させることができることを目指します。
関係が、これより上位のレイヤーを下支えする基盤となります。非常に重要なのに、大半の人が意識していないという現実があります。望ましい関係性をデザインし、関係を構築し、関係性を修正し、関係を維持する、というようなことができる機能のレイヤーです。
毎日同じ事だけやっていれば良い、というような働き方や、誰かに指示されることだけを実施するだけの働き方だと、ここまでのレイヤーでも十分かもしれません。
第五階層 リフレーミング、リパーセプション、イテレーティブリフレクション
第五階層は他者に働きかける立場の社会人にとっての”OS”です。大きな思考、フレームを使う、マネジメントの実行の基礎となります。reframing、reperception、iterative reflectionが実施できるためには、他者との関係が維持できていなければなりません。また、個人の能力として、自己認識に注力でき、イテレーティブリフレクションが実行できることがあって、リフレーミングができ、その結果、リパーセプションへと至ります。
思考それ自体は、第三階層でも一人でできます。しかし、第四階層と第五階層も用いると、成長する変革的な思考を行うことができます。
第六階層 他者に働きかける仕事をする
第六階層はプロジェクトマネジメントなどが該当します。チームとステークホルダーと関係を構築し、ふりかえりながら、プロジェクトを推進することができます。
昔であれば、プロジェクトマネジメントといえば、品質、コスト、納期のバランスで目標を達成することでしたが、今日は、非常に高速に運動する世界において、多くのステークホルダー、様々な専門家と共に、変化に対応したり、自ら変革を起こすことなどが求められています。もはや目標達成だけでは不十分であり、高速に変化する中で、プロダクトではなく“利用者が受け取る価値”の創出までがプロジェクトマネジメントに求められるようになっています。
第七階層 事業開発
第七階層は、事業を開発すること、事業を変革することの実践です。これより下のレイヤーの全てが必要となります。
クライアントワークにおいても、クライアントサイドは、事業開発の手段としてプロジェクトを位置づけています。そのため、請負としてプロジェクトに参加し、推進する、ではなく、クライアントの事業そのものを十分に理解している必要があります。可能なら、事業開発のデザインから、協働できる能力を持っていたいものです。
PMP試験は階層のどこを問われるのか?
主に第六階層が中心であり、部分的に第五階層も関連していると考えます。一〜五については、PMP合格にある程度の能力は必要ではありますが、それ自体を検査されたりはしません。たとえば自己認識力が低くても、PMPになることはできます。プロジェクトマネジャーのコンピテンシーを、知識(Knowledge)、実践(判断)(Practice)、行動(Behavior)、として考えるなら、知識は知ってて当然として問われず、実践と行動を中心に出題されている、と、考えられます。
PMPを実務にどう活かすか?
大きく2つあると考えています。1つ目は、実務上の自己変革です。組織に所属する人物にとっては、会社の理解が得られるならば、自由にプロジェクトマネジメントできることで、成果を高めることはできるようになります。今まではウォーターフォールかアジャイルのどちらかだった環境で、ハイブリッドを導入することなどに挑戦できるようになるでしょう。
2つ目は、知識の幅を広げる基礎となります。たとえば、プロダクトマネジメント、シナリオプランニング、デザイン思考、サービスデザイン、プロダクトデザイン、事業戦略、事業開発、人材育成などに広げていけると思います。知識を広げ、さらにその実務に携わることができるようになります。私は後者のほうが、役に立っていると感じています。
投稿者プロフィール

- 有限会社システムマネジメントアンドコントロール 取締役社長
- Nick/野村隆昌。1970年生まれ。秋田大学鉱山学部土木工学科卒。有限会社システムマネジメントアンドコントロール取締役社長。PMP、PMI-ACP。東大和市と飯能市に拠点。
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