Step 0 では「使えるかどうか」で揺れていた私が、具体的なやりとりの中で手応えを得はじめたのが、このStep 1の頃です。


1. 勉強会での出会い:「やってみた」けれどズレていました

最初にChatGPTで手応えを感じたのは、ある勉強会でのことでした。参加者の一人が「ChatGPTに問題を作らせている」と話しており、それを聞いた私は、「そのような使い方もあるのか」と思い、実際に試してみました。

「XXXの練習問題を5問作成してください」。

返ってきた出力は、私の意図とはかけ離れたものでした。構成が曖昧で、教材として活用するには適さない内容でした。「やはり業務利用には難しい」と感じたのが正直なところです。

そこで、プロンプトを調整し、「XXXの練習問題を5問作成してください。4択形式で、正解はすべての問題の後ろにまとめてください」と具体的な指示を与えてみました。

すると、私が意図した構成にかなり近い問題が返ってきたのです。書き方次第で、結果が変わるということを実感した瞬間でした。

この体験をきっかけに、「やらせ方」や「問い方」そのものの設計に意識が向くようになりました。

現在のChatGPTであれば、PMP試験の練習問題は十分に生成可能です。

ただし、プロンプトの工夫は不可欠です。それを怠れば、出力品質は著しく低下する可能性があります。


2. DeepLではできないこと:「違いを問い続ける」対話の価値

翻訳業務においては、DeepLのほうが高速かつ自然な訳文が得られることが多く、辞書の育成という側面においても学習効果があります。

一方で、「deliverable」「outcome」「artifact」のような類義語の意味の違いを、日本人学習者に理解しやすく説明するという作業においては、ChatGPTの方がはるかに有効であると感じています。

実際に「これらの言葉の違いを、日本語で丁寧に説明してください」と依頼したところ、意味の揺れや使い分けの背景を含めた非常に納得感のある説明が返ってきました。

DeepLは翻訳するだけですが、ChatGPTは比較・背景・文脈を含んだ“思考の補助”として機能する対話型ツールであるという点が、実務上大きな差異です。


3. 「それ、違うのでは?」から学んだこと

もちろん、すべての出力が期待通りに機能するわけではありません。

たとえば、PMBOKガイドの一節を説明させた際に、その章に記載されていない内容を混入させることがありました。あるいは、説明の中で肝心な概念を省略することも少なくありません。

最初は「おいおい」と感じましたが、あるときふと気づきました。

これはまさに、私自身が学習する際に陥っていることと同じなのではないか

文脈を読み飛ばし、理解したつもりになり、不完全な知識で補ってしまう──こうしたプロセスは、人間にとっても珍しくないものです。いや、普通の現象です。

そう捉え直してみたとき、ChatGPTの出力エラーに対する感情は、「仕方がない」と受け入れられるものへと変化しました。

そして思いました。

それならば、共に学ぶ対象として扱えばよいのではないかと。

学習とは、常に不完全な自己と向き合いながら、徐々に質を高めていく営みです。ChatGPTの出力はそのプロセスを加速する補助線になりうると考えるようになりました。


4. 工夫は「命令」ではなく「関係」

私が現在意識的に行っている活用上の工夫は、以下のとおりです:

  • 問いを分割して提示する
  • 指示は明確かつ具体的に与える
  • 一度に過剰な期待をかけない
  • 対話の積み重ねを重視する
  • 必要に応じて初期状態にリセットする

要するに、「命令する相手」ではなく、「対話関係を築く相手」として接することが鍵です。

命令的な一方通行の使い方ではなく、相互的な問いと応答の積み重ねのなかに、学びや洞察が生まれてきます。


5. 「これはもう対話だ」と思った瞬間

あるとき、以前に行った会話の文脈が、ChatGPTの応答の中に自然に反映されていると感じたことがありました。

もちろん、個別の記憶が保持されているわけではありません。しかし、継続した対話の中で形成されるスタイルや語彙選択、論点の構造に、過去のやりとりの影響を感じ取ることがあります。

そのとき、私ははっきりと認識しました。

これは単なる道具ではなく、対話を通して思考を深める“相棒”である。

誤りや齟齬も依然として発生しますが、それでもChatGPTは、私と共に思考を進めようとする姿勢を持ち続けているように見えます。

この認識が生まれて以降、私はこのツールを「ともに考える存在」として扱うようになりました。


今では、実際の仕事の中でも、ChatGPTは「ともに構築する相手」として機能しています。Step 2では、そうした具体的な活用例についてご紹介してまいります。


投稿者プロフィール

nick有限会社システムマネジメントアンドコントロール 取締役社長
Nick/野村隆昌。1970年生まれ。秋田大学鉱山学部土木工学科卒。有限会社システムマネジメントアンドコントロール取締役社長。PMP、PMI-ACP。東大和市と飯能市に拠点。

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