2019年頃から、デザインスプリントのファシリテーションサービスを行っています。2025年8月現在、製造業、ソフトウエアプロダクト開発業などを中心に、およそ40チームに対して、デザインスプリントのファシリテーションサービスを提供してきました。デザインスプリントについては、こちらの解説をご覧下さい。では、デザインスプリントのファシリテーションサービスについて説明していきます。

ファシリテーターがなぜ必要なのでしょう?

独特の難しさ

通常の課題解決、リスク識別、戦略会議のファシリテーションと比べ、Design Sprintは独特の難しさがあります。それは、「リスクのあるプロダクトやサービスを生み出す困難さ」から生じます。

最初、チームメンバーは、「答えの無さ」にモヤモヤします。アイデアを絞るまでの間、そのモヤモヤが続きます。最初の2日間は、ひたすら発散させなければならないのです。そして、3日目に、急激にアイデアが絞り込まれます。ここまで、決まらない微妙な状況に耐えなければなりません。それも、集中して、です。そして、アイデアが絞り込まれたら、次には、「答えが突きつけられる不安」と向き合わなければなりません。5日目のテストでは、ヒリヒリした感覚を感じるでしょう。その午後には、5人との面談から、答えが明らかになっています。小さなPIVOT(軌道修正)で行けるのか、あるいは、アイデア自体、顧客自体を設定し直さなければならないのか、白日の下にさらされてしまいます

5日間、チームメンバーは、心理的にタフな状態が続きます。これを支えるファシリテーションが求められることになります。これが、ファシリテーションの難しさ、ということです。

実際どのように進行するのか?

では、実際の進行について考えてみましょう。

アイデアの選定から始まる

そもそもデザインスプリントは、0→1のプロダクト開発に用いられます。ある程度難易度が高く、かつ、リスクが高い領域に適用されるべきものです。最初のアイデア、「XXXさんのXXXという課題(苦痛)を、XXXで解決する」というものを描きますが、ある程度デザインスプリントに適したものであるべきです。適さないものの例としては、「競合が既にやっているサービスをコピーする」「既にあるサービスを改善する」などが挙げられます。誰も観たことの無いプロダクトであるほうが、デザインスプリントで試す価値があります。

Nick/野村

既にある社内システムのリプレースや、他社製品や他社サービスのコピーをするなら、スプリントにかける以前に、やってしまえば良いと思うのです。但し、既にあるもの、であっても、インターフェースを大胆に変えてみる、あるいは、全く想定していなかった顧客セグメントで試してみる、などの場合は、状況によっては、デザインスプリントを実施してみる価値があるかもしれません。

ファシリテーターは、クライアントと、「初期アイデア」の選定から仕事を開始します。この段階では、リサーチ、専門家へのインタビュー、マッピング、ペルソナ作成、共感マップ作成などを必要に応じて行います。

投資判断を行う人のコミットメントを求める

実務でデザインスプリントを行うとしても、「既存業務で手一杯」という人は、なかなか新たなプロダクトの話に乗りたがりません。後ろ向きな人達も居ます。そこで、役職者、投資判断ができる人の参加を求めます。端的に言うと、「開始日と終了日に短時間登場してもらう」「最終日には投資判断をしてもらう」ことになります。これも比較的早期に実施しておきます。

また、トレーニングだとしても、「業務として、デザインスプリントに参加すること」をメンバーに命令してもらいます。これは、日頃プロダクト開発を行っていない世界では、割と大切なことです。5日間、休憩時間以外は、電話もメールも原則禁止です。集中することが大切です。

5日間のデザイン

ファシリテーターの仕事で一番難しいのが、5日間をどう過ごすか、いつ、何を行うか?というデザインになります。時には、翌日の予定を急遽変更する場合もあります。表現がちょっと奇妙ですが、「5日間を安心して、ハラハラしてもらう」準備を整えます。イーゼルパッドや、付箋やペン、時計などを準備することも、ここに含みますね。結構膨大な量のアナログ資源を使います(デジタルは補助的なもの、です)。

5日間のファシリテーション

ファシリテーターは、ひたすら観察します。ダイアローグの状況の観察と、感情の変化の観察です。実際、様々なパーソナリティの人が参加しますし、時には大激論が繰り広げられることもあります。その様子を観察し、必要に応じて介入します。基本的には、ダイアローグが続かなくなる原因には厳しくするようにします。

また、時間の管理は絶対です。きちっと始まり、きちっと終わる。制限時間内に終えるということを行ってもらいます。明日に持ち越しはNGですし、あまりにも長時間残って作業するのもNGです(終わった後に振り返りの雑談を1時間するくらいならOKです)。

デザインスプリントの成功とは?

1日目に、スプリントクエスチョンを設定し、それがテストされること、これがデザインスプリントの成功です。テストによって得られる結果は、軌道修正して続行か、撤退です。実際、プロダクトがそのまますんなり開発に移行することはほぼ無いのです。軌道修正や撤退は、デザインスプリント的には成功と感じます。逆に、すんなり開発に以降するのは軌跡が起きたか、あるいは、リスクの小さいあまりテストする価値のないスプリントクエスチョンだったか、いずれかだと思うのです。まあ、後者の可能性があります。

ここで考えて頂きたいのは、ある意味、「すんなり開発に移行しない」のがスプリントの成功だ、ということです。顧客からのテストで、軌道修正することで、より価値あるプロダクトに近づくことができた、そう考える必要があるのです。あるいは、ムダに時間とコストをかけずに撤退の判断ができた、と、考えます。

Nickのファシリテーションの特徴

私は割と大きな失敗を観たり、泥臭い世界を歩んできた結果、他のファシリテーターと異なる特徴があると思います。

  • 少しだけ、煽ります。これはチャレンジに導くためです。
  • 少しだけ、感情のキーワードが多いです。これは顧客の感情の変化に気づくためです。また、メンバーの感情についても話題にします。
  • 少しだけ、時間の圧をかけます。短時間の集中を大切にします。絞り出すためです。

いかがでしょう?是非、デザインスプリント、やりましょう!費用は50万円〜300万円と幅があります。5日間の前後、どのくらいの関与が必要か?によって、価格が大きく変動します。また、1チーム7名程度を最小とし、最大、3チームくらいまで、対応できます(それ以上は一人では困難なので外部のファシリテーターを雇う必要があります)。

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